生活物資、原材料、エネルギー。物流事業は日々あらゆるものを輸送し、経済を支えています。
運行には、市民や運転手の安全を確保することや、運送業界の健全な発展を目指す必要があります。そこで、事業を開始するには許可制度が設けられています。(貨物自動車運送事業法)
はじめに
貨物自動車運送事業は、自動車を使用して、有償で、運送する事業で次の3つの種類があります。
⓵一般貨物自動車運送事業 ⓶、⓷以外
⓶特定貨物自動車運送事業 特定の者の需要に応じるもの
⓷貨物軽自動車運送事業 三輪以上の軽自動車及び二輪の自動車
許認可申請の制度の概要はほぼ同じものになっています。
また、事業の形態によって次の2つがあります。
・特別積合せ貨物運送 事業場で貨物の仕分・積み合わせを行い、他の事業場に運送し、配達のため仕分、事業場の間でその貨物を定期的に運送するもの
・貨物自動車利用運送 他の自動車運送事業者に依頼して貨物を運送するもの
これら、貨物自動車運送事業者は、安全統括管理者を選任し、国土交通大臣に届け出なければなりません。そして、事業場の安全の確保に関し、安全統括管理者の意見を尊重しなければなりません。
運行管理者制度
運行管理者試験に合格した者、または一定の実務の経験などを備える者に国道交通大臣より「運行管理者資格者証」が交付されます。
受験する場合の資格として、運行管理に関して1年以上の実務経験、または国土交通大臣の認定を受けた機関で実施される基礎講習を修了していることが必要です。
貨物自動車運送事業者は、事業用自動車の運行の安全の確保に関する業務を行わせるため、この運行管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、運行管理者を選任しなければなりません。そして、運行管理者には安全に関する業務に権限を与え、その業務は尊重され、運転者その他の従業員等はその指導に従わなければなりません。
事業に必要とされる運行管理者の人数が、所有する貨物自動車の台数により定められており、29台まで1名、以降30台毎に1名ずつ追加が必要です。運行管理者が複数名となる場合は、その中から統括運行管理者を選任する必要があります。
許可基準・欠格事由
営業を開始する場合、国土交通大臣の許可を得る必要があります。窓口は、事業を管轄する運輸支局になります。
許可の基準は、安全を確保するためのものや事業継続の安定性などに関するものがあり、主に次の様なものです。
1.営業所 使用権原、関係法令に抵触していないこと、規模
2.車両数 種別ごとに5両以上(需要の少ない島しょ地域を除く)
(→ゆえに事業のためには最低でも5名+運行管理者の計6名以上が必要ということになります)
3.事業用自動車 大きさ、構造等が適切なものであること、使用権原を有すること
4.車庫 原則として営業所に併設
5.休憩・睡眠施設 適切な施設があること。 睡眠用の場合1人当たり2.5㎡以上の広さ
6.運行管理体制
(1) 運転者を、常に確保できること
(2) 運行管理者及び整備管理者を確保する管理計画があること
(3) 適切な勤務割及び乗務割があること
(4) 運行管理の担当役員等運行管理に関する指揮命令系統が明確であること。
(6) 事故防止ついての教育及び指導体制を整え、かつ、事故の処理及び報告の体
制について整備されていること。
(7) 危険品の運送を行う者にあっては、消防法等に定める取扱い資格者が確保されていること。
7.資金計画
十分な裏付けのある資金調達、所要資金の見積り
(車両費、建物費、土地費、保険料、各種税租税公課の1ヵ年分、運転資金)
8.法令遵守
(1)申請者又はその法人の役員は、貨物自動車運送事業の遂行に必要な法令知識
を有し、かつ、その法令を遵守すること。
(2)健康保険法、厚生年金法、労働者災害補償保険法、雇用保険法に基づく社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
(3)法人である場合は、常勤の役員が、貨物自動車運送事業法又は道路運送法の違反により、申請日前3ヶ月間又は申請日以降に、自動車その他の輸送施設の使用停止以上の処分又は使用制限の処分を受けた者ではないこと。
9.損害賠償能力
(1)十分な損害保障能力を有するもの
(2)危険物の輸送に使用する事業用自動車については、当該輸送に対応する適切な保険に加入する計画など十分な損害賠償能力を有するものであること。
10.許可に付す条件等
許可に際しては、次の各号に掲げる条件が付されます。
(1) 2.(3)に該当する事業については、当該事業に限定するなどし、車両数に
ついて特例を認める。
(2) 許可を受けた日から1年以内に運輸を開始すること。
(3) 運行管理者及び整備管理者の選任届を運輸開始前に行うこと。
(4) 運輸開始前に社会保険等加入義務者が社会保険等に加入すること。
(5) 貨物自動車運送事業報告規則第3条の規定に基づき、運輸開始前に確認報告
を行うこと。
この他、事業場における点検・整備を徹底するため、トラック5台以上の営業所ごとに整備管理者を選任する必要があります(資格要件あり)。(道路運送車両法)
申請しようとする者には、主に次の欠格事由が設けられています。
1.一年以上の懲役又は禁錮の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から五年を経過しない者
2.貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者
3.事業を実質的に支配する者が、貨物自動車運送事業の許可の取消しを受け、その取消しの日から五年を経過しない者
4.貨物自動車運送事業の許可の取消しの処分に係る聴聞の通知が到達した日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に事業の廃止の届出をした者で、届出の日から五年を経過しない者
5.許可を受けようとする者が、第六十条第四項の規定による検査が行われた日から聴聞決定予定日までの間に事業の廃止の届出をした者で、届出の日から五年を経過しない者
提出に必要な書類
例)一般貨物自動車運送事業の場合
許可申請に係る標準処理期間は3~5か月とされています。
1.一般貨物自動車運送事業の経営許可申請書 … 申請者氏名・連絡先など
2.事業計画 … 事業種別 / 主たる事務所・営業所 / 休憩・睡眠施設 / 自動車車庫 / 事業用自動車の種別及び種別ごとの数の仕様 / 資本金・決算期 など
3.添付資料
⑴事業用自動車の運行管理等の体制
⑵事業計画を遂行するに足りる有資格者の運転者を確保する計画
⑶事業開始に要する資金及び調達方法
⑷残高証明書等
⑸事業の用に供する施設の概要及び付近の状況を記載した書類
イ.付近の案内図、見取図、平面(求積)図、写真
ロ.都市計画法等関係法令に抵触しない旨の宣誓書
ハ.施設の使用権原を証する書面
自己所有・・・・不動産登記事項証明書等
借入・・・・・・賃貸借契約書等の写し
ニ.車庫前面道路の道路幅員証明書又は、幅員が車両制限令に抵触しないことを証する書類(※前面道路が国道の場合は除く)
ホ.計画する事業用自動車の使用権原を証する書面
車両購入・・・・ 売買契約書又は売渡承諾書等の写し
リース・・・・・自動車リース契約書の写し
自己所有・・・・ “電子化されていない自動車検査証にあっては自動車検査証の写し又は電子化された自動車検査証にあっては自動車検査証記録事項”
既存の法人にあっては、次に掲げる書類
イ. 定款又は寄附行為及び登記事項証明書
ロ. 最近の事業年度における貸借対照表
ハ. 役員又は社員の名簿及び履歴書
〇法人を設立しようとするものにあっては、次に掲げる書類
イ. 定款 又は寄附行為の謄本
ロ. 発起人、社員又は設立者の名簿及び履歴書
ハ. 設立しようとする法人が株式会社である場合にあっては、株式の引受け又は出資の状況及び見込みを記載した書類
〇個人にあっては、次に掲げる書類
イ. 資産目録
ロ. 戸籍抄本
ハ.履歴書
〇法第5条(欠格事項)各号のいずれにも該当しない旨を証する書類
〇貨物自動車利用運送をしようとするものにあっては、次に掲げる書類
イ. 利用事業者との運送に関する契約書の写し
ロ. 貨物自動車利用運送の用に供する施設に関する事項を記載した書類
a 施設の使用権原を証する書面
自己所有・・・・・・・ 不動産登記事項証明書等
借入・・・・・・・・・ 賃貸借契約書等の写し
b 貨物の保管体制を必要とする場合にあっては、保管施設の施設明細書
〇法令遵守の宣誓書
〇代理申請の場合は委任状