専門家でなければ相続を経験する機会は少なく、いざ自分が自分が当事者となると、分割の仕方や手続などどうすればよいのかわからず困ってしまいますよね。また、その分割方法をめぐっては当事者間でトラブルになる可能性もあります。そのようにならないためには法律(相続法(民法))に従って適切に処理する必要があります。
被相続人がお亡くなりになった直後
被相続人の預貯金は相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象になりますが、葬儀費用や当面の生活費などのため相続開始時の預貯金債権額の3分の1に各共同相続人に相続分を乗じた額、ただし150万円を上限(法務省令)として引き出すことができます。(もっとも、金融機関からは戸籍謄本や相続関係説明書などの提出を求めれられるものと考えられます。)
なお、葬儀でいただいた香典は、葬祭費用へ充当され、残余あれば祭祀主催者の供養・祭祀費用に充当します。
香典は、祭祀主催者や遺族への贈与であり、相続財産には含まれないと解されます。相続人が葬儀費用、入院費等を立て替えた場合は、領収書など記録が必要になります。
相続業務を専門家に委任する場合、次のような流れになります
基礎調査 遺言書の検索
貸金庫、仏壇、書斎、生前付き合いのあった友人、行政書士などに遺言書の有無を確認します。
公正証書遺言は遺言書検索システムを利用する。また、法務局の遺言書保管所に保管されている場合は遺言書保管官に対し、「遺言書情報証明書」の交付を請求します。
そして、遺言書がある場合、それに従って分割され、遺言書がない場合は法定相続分にしたがって分割されることになります。
相続人の範囲および相続財産の範囲・評価を確定
被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人の戸籍謄本、固定資産税評価証明書、不動産の全部事項証明書などを調査し、相続関係説明図、財産目録を作成します。相続関係説明図は、法定相続情報一覧図を利用でき、その場合金融機関への戸籍謄本の提出が不要となることがあります。動産の例として自動車の場合、自動車車検証を確認します。
以上をもとに、遺産分割協議書(案)を作成します
遺産分割の合意
相続人全員から遺産分割協議書に署名・押印(実印(印鑑当職証明書))をもらいます
遺産分割協議書の内容に基づいて、金融機関に対して遺産預貯金の払戻手続および不動産の場合は登記(司法書士所掌)を完了させます
金融機関手続
金融機関手続の場合、下記の流れになります
1回目銀行訪問 手続の事前通知
「相続届」を入手、残高証明書を請求します。
預金者(被相続人)の死亡通知
遺産分割協議成立後、相続人代表者(窓口)に遺産分割協議書および相続届をお渡しします。
遺言執行者の口座に一括、または受遺者の口座に金融機関から直接振込のどちらを希望するかを確認しておきます
2回目銀行訪問 指定口座への払い戻し
下記書類を提出します
・代理人(行政書士)に関する書類
・印鑑登録証明書、実印、身分証明書、資格者証
・被相続人に関する書類
・死亡が確認できる戸籍(除籍)謄本
・預金通帳、カード
・依頼者(相続人代表者)に関する書類
・被相続人と相続関係を証する戸籍謄本
・委任状、印鑑登録証明書
・相続人全員に関する書類
・遺産分割協議書
・相続関係説明図
・戸籍謄本
・委任状、印鑑登録証明書
・海外在住は印鑑登録証明書の代わりに在留証明書及び署名証書
払戻が完了され、業務完了となります
費用清算、書類納品、業務完了 報告書を提出します。
専門家の所掌
相続税が発生する場合は税理士が所掌します。また、不動産の相続がある場合は登記が必要になり司法書士に依頼することになります。なお、令和6年4月1日より相続登記が義務化されました。これを怠った場合、10万円以下の過料がありますので注意が必要です。事者間で紛争状態や訴訟に発展するような場合は弁護士へ依頼することになります。
その他にも、相続の方法(相続選択の自由:単純承認、限定承認、相続放棄)、分割の方法(現物分割、換価分割、代償分割、共有)、特別の寄与や負債がある場合など、考慮すべき事項があります。