離婚協議

 厚生労働省の統計によれば令和5年の全国の婚姻件数は47万4717組、離婚は18万3808組であることから、おおよそ3組に1組が離婚するいわれます。県別の離婚率では最高が沖縄県の2.16%、最低は富山県の1.12%、岡山県は1.49%で全国平均(1.48%)とほぼ同じとなっています。

離婚の種類

 離婚には大きく4つの種類があります
協議離婚 夫婦が話し合い、離婚に合意することで成立します。全体の約90%が該当します。
調停離婚 家庭裁判所に調停を申し立て、調停委員を交えて話し合いを行い合意成立を行います
審判離婚 調停が不成立の場合、家庭裁判所の審判により離婚条件を決定します。
裁判離婚 調停の不成立や審判への異議がある場合、裁判上の手続きで離婚をする方法です。裁判離婚は離婚の調停を先にしなければならないことになっています(調停前置主義)。また、離婚原因として、民法で定める下記の事由のうち1つ以上に当てはまる必要があります。

1号 不貞行為、

2号 悪意の遺棄、

3号 三年以上の生死不明、

4号 回復の見込みのない強度の精神病、

5号 離婚を継続しがたい重大な事由

財産分割と慰謝料

 精神的苦痛に対するお詫びとして慰謝料を請求することができます。
また、婚姻中に取得した財産は、夫婦の共有財産となりそれを清算するため、また当面の生活の扶助のためとして財産分与が行われます。
 権利の行使には離婚のときから2年です。慰謝料は損害賠償請求に当たり3年で消滅時効にかかります。
分与の対象となる財産には現金、動産、不動産などの他、婚姻期間に相当する退職金や年金も含まれます。基本的には2分の1となりますがそれぞれの貢献度で決定されます。

名字  

 戸籍から抜ける側は結婚前の戸籍に戻るか、自分を筆頭者として新たな戸籍を作るかどちらかを選択します。旧姓に戻るのが原則ですが、そのまま結婚時の姓を名乗ることもできます。結婚時の姓を名乗る場合は離婚後3か月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を届出人の住所地または本籍地の市区町村へ提出する必要があります。


子供の事

未成年の子供がいる場合、子供について決めておかなければならないことがあります。

親権者 を決めないと離婚できません。
養育費の額と支払方法 法的な規定はなく、現在の収入や状況に応じて決定します。
子供の戸籍と姓 両親の戸籍が別になっても子供の戸籍は当然には引き取る親の側にはならず、元のままになっています。新しい戸籍に入れる場合は家庭裁判所の許可が必要となります。
面会交流の頻度、方法も決めておきましょう。

年金のこと

 妻が第2号被保険者である場合、自分自身の権利として老齢基礎年金、老齢厚生年金を受け取ることができます。一方で、夫が第2号であっても妻が、第1号,または第3号被保険者の場合、老齢基礎年金しか受け取れません。夫の厚生年金から妻が年金を受け取ることができる振替加算という方法があります。20年以上厚生年金に加入している夫に扶養する妻がいる場合、老齢厚生年金には加給年金がつきます。妻が65歳になると加給年金は妻の老齢基礎年金に加算される形で支払われます。ただし、65歳になって振替加算がされる前に離婚してしまうと妻は受け取ることができません。
 このため、離婚する場合は合意分割または3号分割の制度があります。
 合意分割は結婚していた期間に収めた厚生年金保険に該当する部分の年金の半分(その期間の標準報酬の50%)を限度に相手の合意のもとに受け取ることができるというものです。
 妻が第3号被保険者のときは、離婚の際に婚姻期間に相当する公正年金記録を合意なしで厚生年金の標準報酬の2分の1を分割してもらうことができるという制度が3号分割です。請求は管轄の年金事務所になります。

その他、離婚届、住民登録関係、印鑑登録、健康保険、運転免許、転校届など必要な届出がありますので忘れずに行いましょう。

公正証書

 離婚後の話し合いは困難になる場合がありますので、できる限り文書で残すようにします。
きちんと約束を履行してもらうために離婚協議書は公証人による公正証書にしておくべきでしょう。
「不履行時は、直ちに強制執行を受けても異義のない事を承諾する」との文言を入れ、「執行認諾文言付公正証書」にしておくことをお勧めします。
裁判の判決と同じ効力を持ち、約束が履行されない場合には強制執行ができるようになります。

公的サポート

 自治体により異なりますが、支援制度があります。

 岡山市の場合、相談センターや、児童扶養手当、就労支援、母子・父子・寡婦福祉資金貸付制度、JR通勤定期の割引制度、ひとり親家庭等医療費助成制度などがあります。