全国各地で
最近、全国各地で有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)の検出が報告されています。
岡山県内でもいくつか報道が見られます。
令和6年10月 旭川水系の支流で国の暫定目標値50ng/Lの2.6倍となる濃度を検出。 (n(ナノ)はm(ミリ)のさらに100万分の1)
令和5年9月 吉備中央町の水道水から1400ng/Lの濃度を検出。こちらは目標値の30倍近くになります。
吉備中央町の事例は業者が野晒しにした活性炭が原因であるとの調査結果がありました。水系が異なることから両者は関連がなさそうです。
PFASとは
PFAS(ぴーふぁす)とは有機フッ素化合物である、
⓵ペルフルオロオクタン酸(PFOA)
⓶ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)
⓷ペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)
の総称で、国の暫定目標値はこれらの合計になります。
化学的に安定した物質なので、防水塗料や泡消火剤などに使用されてきました。
PFOA:末端がカルボン酸で8つの炭素鎖にフッ素が結合している。見るからに安定した構造である。
基準値等について
国の暫定目標値というのは、カドミウム、全シアン、トリクロロエチレンなど27項目の水質関係環境基準値とは異なり、公共用水域の水質汚濁に係る要監視項目として指針値が示されているものです。
環境基本法(第16条第1項)で定められている水質関係環境基準に健康項目の追加が行われた際に(平成5年3月)、人の健康の保護に関連する物質ではあるものの、状況からみて現時点では直ちに環境基準項目とはせず、引き続き知見の収集に努めるものとしたものです。
クロロホルム等の25項目があり、「要監視項目」と位置づけ、その推移を把握しています。PFASは令和2年に追加されました。
人体への影響について
人体への影響について詳細はよくわかっていませんが、2023年11月にWHO(世界保健機関)の専門組織IARC(国際がん研究機関)が、PFOAの発がん性を「可能性がある」(グループ2B)から2段階引き上げ、「ある」(グループ1)として公表したばかりです。
基準値はどうやって設定される?
無毒性量とは
リスク評価にはマウスなどを用いた動物実験において、有害物質を取り入れた際に毒性が現れる閾値が存在する化学物質の場合、その投与量以下では有害な反応が認められない無毒性量NOAEL(Non-observed adversed effect level)を計測します。
無影響量とは
また、毒性試験で影響がみられない最大の投与量である無影響量NOEL(Non- observed effect Leve)があります。(クリスマスではない)
最小毒性量とは
さらに、毒性試験において何らかの影響が認められる最低の暴露量を最小毒性量LOAEL(Lowest observed adverse effect level)があります(下図参照)。 これらの単位は何れも[mg/㎏(BW)]となります。
そして、ヒトが一生涯摂取しても有害な影響が現れないと計算される、体重(BW)1kgあたりの1日あたりの摂取量を、耐容一日摂取量TDI(Tolerable daily intake)として計算します。
TDIはNOAELを不確実係数(安全率。通常100)で割った値になります。不確実係数は動物実験データをもとに、ヒト(という動物)に適用する際の感受性を考慮した数値10(仮定)と、その動物の中での感受性の個体差を考慮した数値10(仮定)をかけて100としています。
一方で、PFASのように発がん性の指摘がされるような物質には閾値は存在しないと考えられており、TDIを設定することはできません。
そこで、暴露濃度から、発生率を原点まで外挿して10-6のリスクが現れる(10万人に1人が発症する)ことを許容する実質安全量(VSD:Virtually safe dose)を基に算出します。
環境基準値[mg/L]=NOAEL/100(=TDI)[mg/㎏(BW)/D]×50[㎏(BW)]÷2L(一日想定飲用量)×(飲用水からの寄与率(最大80%))
分析
分析方法はフッ素ということでランタン-アリザリンコンプレキソン法を思い浮かべますが、有機化合物であるためか、HPLC-MSを用いる手法が主流のようです(液クロして四重極質量分析)。前処理に関する分析技術には各分析機関のノウハウがあります。
いかがでしたか。今後も引き続き注意していきたい情報です。
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